約 3,413,714 件
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3800.html
● モニカは寝台に拘束されたまま、ウィリアムの≪心霊手術≫を受け続けていた。 腹に手を差し入れられてそのまま中をかき回される不快感と、手と腹の接合部から溢れて来る血液の生暖かい感触に苛まれて嫌な汗をかいていると、不意にウィリアムが歓喜の声を上げた。 「見つけたぞ!」 その言葉と共に、モニカは自分の中の形の無い何かがウィリアムの手によって一つにまとめられ、固まって行くのを感じた。 な、なに、これ……? 得体のしれない不安に唇を堅く引き結ぶ。 固形物のように体内で形を得たそソレは、ウィリアムの手によって握りつぶされ、モニカの中で弾けた。 「――ッ!」 モニカが上げる短い苦悶の声を合図にするかのように、ウィリアムは宣言した。 「術式終了だ」 そうして、長らくモニカに不快感を与えていたウィリアムの手が引き抜かれた。 粘性を持つ液体から両手を抜きとる水音を一際大きく響かせ、ウィリアムの両手がモニカの中からずるりと抜けだす。 身構えをする間も無い突然の動作に、モニカはえずいて身を捻った。 「手こずらせてくれた……しかし流石に根が深いね。契約解除でなく封印という形でしかこれを隠蔽できないわけだ。ともあれ、これで封印は解けたよ」 寝台の上で苦しそうにえずくモニカを特に問題は無いと無視して、ウィリアムは大儀そうに息を吐く。 「まったく、追われている最中の短い時間の中で施したにしては大した封印だ。≪悪魔の密輸≫と言ったかね、レニーとトリシアの都市伝説は。 元々は体内に麻薬を埋めて密輸を行う都市伝説だったと記憶しているが、本来形を持たないモニカ嬢の都市伝説を体内という異界の中に封じ込んでしまうのだから恐れ入る。 彼等は普段、穏便に事を運ぼうとしていたものだが、いざという時は思い切りが利く……惜しい人材だったのだがね」 ガラスを連ねたような形状をした、妙な機材をいじりながらモニカの上半身と腕を拘束していた器具を外すと、ウィリアムは≪心霊手術≫で溢れた血液を拭くためのタオルと替えの簡素な衣服をモニカに放り投げた。 「さて、体に問題は無いかね? モニカ嬢」 モニカは自分の身体に何か変化が起こっていないかを探りながら服を着ていく。その間中決してウィリアムの方を見ようとはしない。完全にコミュニケーションを拒否する構えだ。 ウィリアムは反応を示さないモニカから早々に機材へと目を移して計器類を確認し、大丈夫だろうと判断を下す。さあ、と前置きを入れて、 「モニカ嬢。これで君は君の本分を果たす事が出来るぞ!」 「本分……」 その言葉にモニカは内心首を傾げた。 封印が解かれたとは言っても何を封印していたものなのかが分からない。先日からのウィリアムの話から想像するに、封印を施したのが両親であり、その封印されていたものこそがその都市伝説なのだろうが、そもそもモニカには都市伝説と契約した記憶などないのだ。 謎はあり、何がウィリアムの手によって起ころうとしているのか気になりはするが、今モニカにはそれ以上の心配事があった。 「……フィラちゃんたちはどうなったの?」 先程ウィリアムは、培養器の中から幾体もの異形の怪物達を由実達へと差し向けていた。そのすぐ後にウィリアムがマイクを通して話していた内容を聞きとると、どうやら怪物達と由実達は遭遇してしまったようだった。 無事ならいい。そう思いながらの問いかけに、ウィリアムは頷きを作った。 「彼女等は今は生きているよ。うん、よく粘る。しかし囲まれているね、このままではいずれ押しつぶされることだろう」 「そんな……!」 悲鳴のように上ずった声が漏れ、未だ拘束されたままの下半身が寝台の上で窮屈に動きを制限された。その不自由な状態が、とにかく行動を起こそうとするモニカの気を加速度的に焦らせる。 このよく分からない施設に攫われてしまったのは自分が迂闊だったせいだ。この上、自分をこの施設から助け出そうとしてくれている優しい人達にひどい事が起ころうとしている。その事にモニカは焼けつくような焦燥を覚えて、その原因であるウィリアムを睨み上げ、 対するウィリアムはふむ、と興味深げに訊ねてきた。 「君は、自分が何故こうして助けられようとしているのか、知っているかね?」 ● 無言を返事とするモニカへと、ウィリアムは更に言葉を連ねてきた。 「モニカ嬢、君の身体は都市伝説との親和性を高める為に様々な手を尽くしてあると以前話したね? 生まれる前からこちらで手を加えて都市伝説との親和性を高めて誕生した君は、≪神智学協会≫という組織の研究の集大成であり、オルコットが目指す目的の為の、二つの都市伝説を収めるための器だ」 そう言ってウィリアムは慈しむ、という表現が当てはまるような、完成された芸術品を愛でるかのような手つきでモニカの頬に触れる。 「君は気付いているかい? 今回君や君が姉と呼んだ女も。今こうして駆けつけている者達も。倒れて行った、あるいは倒れていく者達も。そして君の両親も――」 ここから先の言葉を聞いてはいけない。何故か本能的にそう思ったモニカは手で耳を塞ごうとし、しかしその手はウィリアムに抑えつけられてしまった。 ウィリアムの言葉が妨げられる事なく、耳から心へと侵入する。 「君を人として見ていない。君は誰かにとっての争いの火種で誰かにとっての悲願成就の為の道具で、そして誰かにとっての疫病神だ」 「――ちが」 「違いなどしないよ」 反射的に発されようとしていた反駁の言葉はウィリアムにその出鼻をくじかれる。 「むしろ君にそれだけの価値が付属していない限り誰も君を助けに等来るはずが無いだろう? 実の家族や家族のように親しかった存在が争い合う火種になったような君の存在を、本当に愛する者などいると思うかね?」 耳に飛び込んでくる言葉にただモニカは首を横に振って拒否を示す。 しかし疲労とストレスに思考力は削ぎ取られ、心理的な防壁はもろくも崩れ去る。そうしてウィリアムの言葉は否応なしに受け入れられていく。 口角をつり上げた笑みで、ウィリアムは断じた。 「君は人ではない、道具だ。それも、とてもとても貴重で危険な最高の逸品だよ!」 言葉は刃となってモニカの心を抉った。 実の両親と祖父の死。親しかった騎士が行った凶行。いつの間にか操られ、姉と慕う女性を危機に晒した事実。複数の組織間の抗争。その過程で失われていった多くの命……。 この数日で見て来て、知らされてきた事が脳裏を埋め尽くす。 わたしは……疫病神……皆を不幸にする、危険物で……わたしは……。 この数日でじっくりと悩む間もほとんどなく、様々な事実を突きつけられてきたモニカには、ウィリアムの発言は反論のしようのない事実に思えた。 「君はとても我慢強い。ワタシにもそれがよく分かる……。そしてね、モニカ嬢、ワタシには君が我慢して溜めこんでしまっているモノが見えるようだよ。精神の奥に凝り固まった膿がね」 強烈な自己否定と自己に対する忌避感が一挙に襲いかかる。 既にウィリアムによって意図的に均衡を崩されかけていたモニカの精神は、臨界点を迎え、 「そしてその膿こそが君の振りまく厄病の正体だ」 ――越えた。 モニカの中で、封印を解かれた強力な力が胎動する。 胎動が一拍を刻むごとに彼女の視界は霞み、意識が形を失って行く。その力に衝き動かされる形で、モニカは天を見上げた。 口を大きく開け、 「あ! あ……ッ、あ、ああ! あああああああああああ――――――ッ!!」 喉を自ら破壊しようとでもいうかのように暴力的な、自己を否定する嘆きの声がモニカの口から迸り始めた。 そして、 「ふ……っ! ははは! 成功だ! 本分を果たすと良いモニカ嬢! ワタシの望む結果を見せてくれ!!」 モニカの中に永らく封印されていた都市伝説が、彼女の嘆きに呼応するかのように暴発した。 前ページ次ページ連載 - Tさん、エピローグに至るまで
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4992.html
「子供の頃傘持ってジャンプとかしたよね」 ざあざあ、ざあざあ。ざあざあ、ざあざあ。雨が降っている。学校の屋上に、傘をさした少女が一人。 屋上は弁当を食べたり、黄昏たりする場所であるというイメージがある。いくら傘をさしているとはいえ、本来雨の日に行く場所ではない。 しかしそこには確かに少女が居た。傘をさした少女が居た。ぴちぴち、ちゃぷちゃぷ、長靴で水たまりを踏みながら歩いていく。 そして。次の瞬間――― 「え~いっ!」 傘をさしたまま――――少女は飛び降りた。屋上から飛び降りた。 コンクリートから足を離した少女の身体は、そのまま地球の重力に従って、真っ逆さまに――― ―――落ちなかった。何ということだろう。その少女の身体は、ふわふわと。ふわふわと、宙を舞っているではないか! 背にパラシュートを背負っているわけではない。天使のような翼が生えているわけではない。 あるものと言えば、手に握った傘ひとつ。にもかかわらず、少女の身体はふわふわしていた。 「やっぱり気持ちいいなあ、雨の日の空の旅!」 少女の名は傘松 小雨(かさまつ こさめ)。小学生である。黄色い傘が可愛らしい。 「こんな~雨の日は~ヘリとか~鳥とかもいないし~。雨空は~私だけの~フリ~ワ~ルド!」 傘を差すだけで宙を舞っている。その異常性だけで気づく人は気づくだろうが、彼女は都市伝説契約者である。 彼女の契約都市伝説、それは『傘をパラシュート代わりにできる』。星のカービィなんかでイメージが付いたのだろう。 我々は子供のころ、傘を差して飛び降りるとパラシュートのようにふわふわ舞い降りることができると信じていた。 それが形になった、その『子供たちの夢』から生まれた都市伝説。それが『傘をパラシュート代わりにできる』である。 「地面ならともかく~、こ~んな雨の日に空飛んでる都市伝説なんていないだろうしね~」 言いながら、少女はふわふわ空を舞う。雨音をBGMに、空を舞う。 「あっ、そろそろ地上かぁ。しょうがない、また昇り直……」 その瞬間、びゅん、と何かが飛んでくる。器用に位置を変え、小雨はそれを間一髪躱した。 「なんなの~、も~……」 呟き、地上に足を付ける。何が飛んできたかは分からないけど、危ないじゃない。気を付けてよね―――と、思っていると。 「きゃっ!」 躱したはずの『それ』が戻ってきて。小雨の小さな体を突き飛ばした。 「ひっひっひっ」 飛んできた何かは不気味に笑う。動きを止めたことでその正体が露わになった。老婆だ。 「何~、何なの~?」 「こんな雨の日に出歩くなんて危ないじゃないかい」 「そんなこと~、聞いてないんだけど~?」 「暗くて誰もいない時に一人で出歩くだなんて……私達に襲われたいって言ってるようなもんだよぇ!」 言いながら、老婆は腰を曲げ、小雨めがけて飛びかかる。 「当たらないよ~? 何なのお婆さん?」 しかし、小さな体躯を生かしてすらりと躱す小雨。 「やっぱり子供は子供。甘いねぇ!」 二度も同じ手に引っ掛かるだなんて――――言いながら、老婆は戻ってきた 「んぐっ……!」 クリーンヒット。小さな体に老婆一人分の体重は大ダメージとなり得る。 「何で……羽根もないのに~……。いや~……そっかぁ~」 苦しそうにしながらも立ち上がり、小雨は言う。 「『ブーメラン婆』~! だから避けても避けられなかったんだぁ~~!」 「ひっひっひっ、ご名答。子どもにしちゃ賢いじゃないか」 「どうしてこんなことするのよ~。人が気持ちよ~く飛んでるときに~」 「ひっひっひ、都市伝説(わたしたち)が人を襲うのに……理由が必要かい?」 「あはは~、そりゃそうだ~!」 言いながら、小雨は飛び退き『ブーメラン婆』と距離を取る。 「逃げるつもりかい? 無駄だよ、遠距離(それ)は私の間合いだ!」 『ブーメラン婆』はその名の通り、ブーメランのように回転しながら、小雨めがけて飛んでくる。 「逃げる? ちがうよ~?」 その瞬間、強い風が吹いた。こんな天気だ、風くらい吹くだろう。しかし―――それが何だというのだ? 「戦うつもりかい? でも残念! 私はこの程度の風、物ともせず飛んで行ける!」 一方お前さんの得物は傘じゃないかい。突風の中じゃまともに傘なんか差せない。 どうやら天は私に味方したようだね!言いながら、『ターボ婆』は飛んでくる。 確かにそうだ。この状況、普通なら圧倒的に小雨の不利。 「違うよぉ~? 天運はどうかしらないけど~……天気はいつでも、私の味方なの~」 そう、あくまで普通なら。普通も常識もないのが都市伝説や契約者の戦いだ。 『ターボ婆』の身体は風にあおられ、地面にたたきつけられた。 「ぐえっ……! お前、何をしたんだい!?」 「『何をした』~? おかしなことを聞くんだね~? 貴女は風に吹き飛ばされ落っこちた。それだけでしょ~?」 「そんなわけあるかい! 私が吹き飛ばされるくらいの風なら、お前が吹き飛ばないわけがない! お前、契約者だね!?」 都市伝説の力で風を起こしたんだろう!? と、『ターボ婆』は吠える。 「さぁ~? ど~だろ~ね~?」 間延びした声で、小雨は答える。しかし、質問には答えない。 「なめんじゃあないよっ、ガキめ!」 『ターボ婆』は体勢を立て直し、再び飛びかかろうとする。しかし、それは叶わない。 「全く~、大きな声をあげるものじゃ~ないよ~? お婆さん。血管切れますよ~?」 頭では冷やしたらどうです~? と小雨が言うのと同時に、『ターボ婆』の頭上に滝のような鉄砲水が降り注いだからだ。 「ごぽごぽ! げほっ、げほっ! やっぱり……契約者!」 恐らくは水や風……つまり、嵐を操る能力! 『ターボ婆』は推理する。 「残念だけど~、お婆さんに勝ち目はないよ~?」 「言ってろ!」 と吠えてみるものの、しかしその通りだ。ターボ婆は本来雨の日の都市伝説ではない。 嵐という、最上級の悪天候を操る能力者への対抗法を持ち合わせていない。 しかし―――― 「あれ~~~?」 心なしか、雨足が弱まってきた? いや、気のせいではない。確かだ。なぜなら―――― 「ひっひっひっ、どうやらやっぱり、天は私に味方しているようだねぇ!」 突如雨が上がるばかりか、雨雲も晴れ上がったからだ! これ幸い、と『ターボ婆』は反撃の体勢に入る。 「だ~か~ら~、言ったでしょ~? 天運はともかく、天気はいつでも私の味方だって~」 言いながら少女は『ターボ婆』に傘を向ける。傘に付いた水滴が日光を反射し―――― 「うぎゃああああああああ!」 ビームのように、『ターボ婆』を焼いた。 「何……『嵐を操る能力』じゃあないのかい……?」 「嵐を操る~? そ~んな怖い能力、私が持ってるわけないじゃな~い」 私はただ、天気を味方に付けるだけだよ~? 言いながら、少女は指鳴らそうとする。 が、鳴らない。すっ、となるだけである。 「う~~~~……」 可愛い。 しかしその可愛さと裏腹に、能力はしっかりと働いていて。 天から降り注ぐ光が、『ターボ婆』を焼き尽くした。 「まさか~……私の持ってる傘がただの傘だとでも思ってたのかな~? 答え合わせしてあげるね~。『幽霊傘』。それが私の、もう一つの契約都市伝説だよ~」 その声に答えるように、傘は―――否、『幽霊傘』は目と口を開き、ぺろりと舌を出す。 『幽霊傘』。『唐傘お化け』の類話の妖怪であり、突風の日に人を空へ巻き上げてしまう。 契約によって得た能力は、『天気の影響の超強化』。 即ち風であらゆるものを吹き飛ばし、雨を鉄砲水に変え、日光を熱光線に変える。そんな能力。 「屋外で私に勝負を挑んだのが~、貴女の敗因だよ~? な~んて、聞こえてるわけないか~」 そう呟き、少女は踵を返す。 「あ~あ、晴れちゃった。スカイダイビングはおしまいだね~。しょうがない、帰ろ~」 空はすっかり晴れたけど、小雨は相変わらず傘を差し。長靴で水たまりを踏みながら、ちゃぷちゃぷちゃぷちゃぷ、家に帰るのであった。 続く EXIT
https://w.atwiki.jp/legends/pages/4452.html
本の虫 「ねえ、私、きれい?」 「悪いけどあんまり好みじゃないなぁ。君、本とか読んでなさそうな顔してるもの。」 夜の路上、本屋帰りと思わしき袋を携えた青年はさらりと応える。 「そう……あんたも私の顔を醜いっていうんだ……。そんな奴……殺してしまおう。」 すらり、とどこからか鎌を取り出して、マスクを外した口裂け女は青年を睨む。 「それは困るなぁ。まだ読みたい本がいっぱいあるんだ。」 その言葉と同時に、青年の体に墨文字のような模様が浮かび上がる。 それは青年の体表の上をぞわぞわと蠢き、まるで無数の虫が這っている様にも見えた。 「おいで、僕の『紙魚』たち。食事の時間だ、いっぱいお食べ。」 青年の言葉を契機に紙魚と呼ばれた墨文字たちが地面に流れ落ち、一斉に口裂け女へと向かっていった。 「虫を操るなんて悪趣味な……近寄るな気持ち悪い!」 口裂け女は地面を薙いで紙魚を払い、足元に近づいた紙魚を踏み潰す。 それだけで紙魚は水に濡れたインクのように、地面で、あるいは空中で滲んで消えた。 「何だ……?随分と弱い都市伝説だな。」 「乱暴にしないでくれよ。彼らはとても脆いんだから。」 「そんなもので私を止められるとでも?……切り殺す。」 相手の都市伝説は大した力を持たないと踏んだ口裂け女は無数の紙魚を踏み潰しつつ、100m3秒の俊足をもって青年に肉薄する。 そして手に持っていた鎌を青年の胴体目掛けて水平に振るった。 だが、口裂け女の鎌は青年の胴体を切り裂かなかった。 その手に握り締めていた鎌が、いつの間にか消えうせていたのだ。 代わりに口裂け女の体、本人からは見えない位置では無数の墨文字……紙魚が蠢いていた。 「なっ、なんで私の……私の……何?私は……何かを持ってた、はず……何、を持って……いた?」 「君の鎌なら、僕の紙魚が食べちゃったよ。」 本とは、文字を媒介とした『情報』の塊だ。 紙魚は本を構成する文字、すなわち本の『情報』を食う。 都市伝説とは、噂を媒介とした『情報』の塊だ。 青年と契約した紙魚は都市伝説を構成する噂……すなわち、都市伝説の『情報』を食う。 「正確には『口裂け女は鎌を持っている』という『情報』を食べた。ゆえに君は鎌を持たない。」 「鎌、だと?そんなもの無くともお前を……お前を?お前は、いや、私はお前に、何かをしなけれ、ば……何、を……。」 「それと、『容姿を否定した者を切り殺す』という情報も食べさせてもらったよ。」 「ううっ……私は、何のために……何を……。考えがまとまら……一度、逃げ……。」 口裂け女はその場から走り去ろうとするが、足に、体に、力が入らない。 いつもならもっと……と口裂け女は思うが、いつもなら何がどうなのかは思い出せない。 「『100mを3秒で走る』という情報もすでに食べた。 というか、人間で言えば臓器をいくつか奪われてるようなものだから、動くこともままならないはずだよ。」 うずくまる口裂け女の口が、普通の女性のそれに変化していく。 それと同時に赤いコートが色あせ、徐々に白く透き通っていく。 「『口が耳まで裂けている』『赤いコートを纏って現れる』『べっこう飴が好き』『ポマードが苦手』。君が君たる君の全て、食べさせてもらう。」 もはや口裂け女は抵抗する意思さえ見せず、うずくまってぶつぶつと断片的な言葉を呟くだけだ。 「わ……私は……なぜ……何を……。私は…………私とは……何、だ?」 「口裂け女、読了。」 『口裂け女』を構成する情報を根こそぎ喰らい尽くされた『何か』は、光の粒となって消滅した。 その跡には黒い水溜りのように蠢く墨文字……紙魚の姿があった。 その様子は心なしか悦んでいるかのようにも見える。 「さあ帰るよ。折角探してた本が買えたんだ。早く読まなきゃもったいないだろう。」 くるりときびすを返した青年に慌てたように追いすがった紙魚は、そのまま青年の体に溶け込むようにして消えた。 【終】 「単発もの」に戻る ページ最上部へ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3874.html
きぃ、と 暦がいる部屋の扉が、開かれた 入ってきたのは、オール・アクロイド……A-No.0だ 「空野 暦、体調や精神に、問題は起きていませんか?」 「ん~、問題ないよ~」 オールの言葉に、のんきに言葉を返す暦 そうですか、と短く口にして、オールは彼女の正面に座る 「用事、終わったの?」 「はい。問題なく、終了しました。今の私の役目は、あなたが退屈しないよう、話し相手となる事です」 暦をここ、ユグドラシルまで送り届けたオール イクトミの支配する蜘蛛に乗って移動してきた為、問題なく出迎えられ 保護の経緯を…イクトミからたくされた、詳しい事はそちらに聞けば良い、と言う点なども全て報告し …そこまでは、良かった ただ 報告の際、オールは、自分のナンバーを名乗らなかった 恐らく、問題が発生した原因は、それ オールからの報告を受けた黒服は、オールを、一般黒服の一人であると勘違いした まさか、「組織」のトップが目の前に居るなどと、考えもしなかった彼に罪はあるまい その勘違いゆえに、彼はオールに、暦の話し相手と言う任務を、与えてしまったのだ それをそのまま受諾したオールもオールである 重ね重ね言うが、オールから報告を受け、指示を出した黒服(推定・Eナンバー)に罪はない 「そっかー、話し相手かー」 「とは言え、私はイクトミのように愉快な話題を提供する事はできないと思いますが」 「わー、正直ー」 淡々と、感情薄く話すオール …ちらり、と、暦の持っているバレットナイフとペインティングナイフに、視線を向けた その視線に、暦は気付く 「…ん、やっぱり、これ、気になる?」 「「組織」の者としましては、あなたはそれを手放すべきであると考えます」 単刀直入に、そう告げるオール 淡々と話しているその間も、視線はパレットナイフとペインティングナイフに向けられたままだ 「あなたが、それらに問い掛けられたであろう問い……あなたは、その都市伝説に試された。危険な兆候です。あなたの意図に関わらず、強制的に契約が成立してしまう可能性があります」 「そんな事ってあるのー?」 「都市伝説に、意志があるかないか……どちらにせよ、都市伝説が本能的に契約者を求める以上、そして、その都市伝説にふさわしい契約者の素質が限られている以上……その素質を持ってしまったあなたが、強制的に契約を結ばされる可能性は否定できません」 過去の都市伝説や契約者のデータなどを参考にしつつ、オールはそう、口にした ん~、と、暦はじっと、その二つのナイフを見つめる 「あなたに、それを与えたU-No.13の意図……それは、私には理解できません。しかし、あなたが何かに利用されようとしている。それを否定できる材料は存在しません」 …あの男の動向には、気をつけるべきだ 監視をつけたほうが良いのかもしれない オールは、そう考える どうにも、あの男に都合よく、事が進んでいるように思えてならないのだ それに… 「……U-No.13は。あの時、最後にダレン・ディーフェンベーカーと接触した…………その事実を確認した以上、彼もまた、容疑者の一人ですから」 呟くように、独り言のように、オールの口から漏れ出した言葉 その、言葉を ダレン・ディーフェンベーカーと言う名前を、口にした瞬間 今まで、一切感情が伴っていなかったオールの声に…かすかに、感情が、ともった ダレンは、生きていた その事実を知った、今でも …オールは、あの優しいお人好しを傷つけた存在を、殺そうとした存在を 決して、許す事ができないのだ 「…ん~?そのダレンって人、オールさんの大事な人なの?」 「……わかりません……しかし、どうやら私にとって、特別な感情を抱く存在であり対象である事は、確からしいです」 ……人はそれを、「恋慕」と、「恋愛感情」と呼ぶのだが 己の感情を、まだよく理解できていないオールには、その事実はわからないままなのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 無垢なる支配者と蜘蛛
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2977.html
…トンカラトン達が、消えていく 壊れた自転車や、手にしていた獲物だけを、残して その様子を遠巻きに見詰めながら…ディランは、どこか悲しげな表情を浮かべた 彼らは、人を襲う以外の道を選べなかったのだろうか?……と 自分は、その生き方を選ぶ事ができた その生き方を、認めてくれる人達がいた だが、全ての都市伝説が、そんな生き方を選べるわけではない 大半の都市伝説は、己の生まれる元となった話に、忠実に行動してしまうのだ 軽く頭を振り、思考を振り払う 異空間が、消えていっている 八尺様が、「白線渡り」の異空間を解除したのだろう 異空間から、現実へと戻っていく 中央高校の、敷地の外 校門のすぐ傍だ 荒神が、人体模型と骨格標本に、校舎に戻るように言っている …それは、そうだろう 2人とも、姿を隠すような能力など持っていない 一般人に見られたら、大問題だ 「ディラン、終わったのか?」 「あ…デ、ディーデリヒ……う、うん。終わったよ」 校門の傍に待機していたディーデリヒに声をかけられ、ディランはこくりと頷いた 大柄な異人の姿をとったディーデリヒを見あげ、えっと…と、続ける 「ねぇ、ディーデリヒ。八十……八尺様の怪我を、治してあげてくれる、かな…?」 「うん?…あぁ、あの女か。わかった」 す、とディーデリヒが、八尺様に視線をやった 八尺様が、やや、警戒した様子を見せる 「あ、八尺様、大丈夫ですよ。彼が、私たちを八尺様の「白線渡り」の空間に侵入させてくれた人なので…」 「……人、ではなく魔だの……契約者ではなく、魔、そのものか」 …そう 八尺様の言う通り ディーデリヒは、ディランと同じ…契約者ではなく、都市伝説そのもの 元は人間であったらしいが、飲み込まれて都市伝説そのものになってしまったと聞いている …最も、人間であった頃の記憶など、まったく残っていないそうだが そんなディーデリヒは、辺りに人目が無い事を確認し… ぐにゃり その体を、変化させていく 大柄な、異人の男性の姿から 小柄な………美しい、西洋人のシスターの姿へと そして、祈るように手を合わせ……その手の中に、土を出現させた 「どうぞ…水に溶かして飲んでください。傷が癒えます」 「…っぼぼ……随分と、多彩な力を持っているようじゃの…」 「いえ、私の力はただ一つ。後は、他の誰かの力ですから」 にこりと、シスターの姿を取ったディーデリヒは、笑って 八尺様の、目の前で 八尺様の姿に、なって見せた 「っぼぼぼ……つまり、我の力はこれただ一つ。変化すれば、それにあわせた力が使える。ただ、それだけじゃ」 「変身…まるで、ドッペルゲンガーですね」 「…っぼぼ!ほぉう、わかるか」 高元の言葉に、ディーデリヒは笑い…ぐにゃりっ 再び、姿を変える この中央高校に来た時の姿…ジブリルの、姿に 彼は、親しい相手であれば、目の前にいなくとも変身可能だ それ以外は、視界に入った相手でなければ変身できないのだが そして、変身すれば、その相手の能力を使用できる いくらでも応用の効く力なのだ 「それじゃあ、俺はこれで」 「う、うん……ありがと、ディーデリヒ」 するり、ディーデリヒが、異空間の向こう側に消える …ダレンの傍に、戻っていった 「八尺様、校舎の中で、コップを借りてきましょう。そのまま土を飲むのは辛いでしょうから」 「…っぼぼ………できれば、ここに入り込むのは遠慮しておきたかったが…」 よろり そう言いながらも、立ち上がる八尺様 よろけた体を、高元が支える …信頼しあっているんだな その光景に、ディランは温かい物を覚えた 同時に、契約者が存在する八尺様に …羨ましさを、覚えた 自分は、契約者を持てた事がないから 契約者を持っている都市伝説達が…どうしようもなく、羨ましくなってしまう事が、あるのだ 校舎の中に入っていく高元と八尺様の後を、ディランはとことことついていく 荒神は、さっさと校長に報告に行ったようだ 「……」 …最後に ディランは、死んでいったトンカラトン達に、静かに冥福の祈りを捧げて 校舎の中へと、戻っていったのだった fin 前ページ連載 - 赤い靴
https://w.atwiki.jp/legends/pages/3123.html
学園祭に向けて準備が進められているとある放課後、双子の姉妹である「犬神憑き」の契約者、天倉紗江と「怪人アンサー」の契約者、天倉紗奈は家路へと歩いていた。姉妹の後ろを、「犬神憑き」の内の一匹の黒い大型犬がついてきている。 「紗奈ちゃんのクラスの出し物、執事・メイド喫茶だっけ?」 「うん、そうだよ。今、荒神先生にも執事服を着せようってクラスの有志で追いかけてるんだけど…なかなか捕まってくれないんだよねー でも、獄門寺くんや小鳥遊くんも手伝ってくれてるんだもの…絶対に執事服を着せてみせる! 紗江ちゃんのクラスは?」 イベントや行事に対してやる気を見せる紗奈。 今回の場合、やる気に加えて普段白衣を着ている荒神先生の執事服を見たいという好奇心もあり、有志の一人として先生を追いかけていた。追いかけられている先生にとってはたまったものではないだろうが。 「(あ、荒神先生も大変なんだなぁ…) 私のクラスの出し物は『ワクワクトレジャーボックス』だよ。手錠で繋がれた男女1組がペアを組んで、校内に置かれた箱の中から手錠の鍵を探すの。箱には鍵以外にもいろいろ景品が入ってて、空けた人が貰えるんだよ。 執事・メイド喫茶かあ…紗奈ちゃんのメイド服見たいなぁ。見に行ってもいいかな?」 「へぇ…なんか楽しそうだね。休憩時間に顔出しにいくからね。 紗江ちゃんなら大歓迎だよ!来てくれるの楽しみにしてるね」 「君たち…注射をしても…いいかな?」 和やかな空気は、毒々しい色の薬品の入った注射器を持って、ボロボロの黒いコートを着た注射男の登場によって霧散した。 「お断りします!」 「よくないっ!」 即答する紗江と紗奈。注射器の中の液体が都市伝説にも効くのか分からないので、念のため犬神を下がらせておく。 「そんなこと言わずにさあ…注射をさせてくれよぉぉぉ!!」 目を血走らせて姉妹に襲い掛かる注射男の攻撃を左右に分かれて回避。 紗江が注射器を持っている方の手首に手刀を打ち込み、取り落とした注射器を遠くへ蹴飛ばす。 紗奈が注射男の手首を取り、外側に返すようにして注射男の体制を崩して地面に倒した。 犬神が倒れた注射男の喉に噛みつく…首の骨が折れたのか、ごきり、と音がしてそれきり注射男は動かなくなった。 「そちらのお二方、少しよろしいですか?」 注射男を倒した直後、背後から声をかけられた。 二人が振り向くと、いつの間に現れたのか、黒いサングラスを付けて黒いスーツを着た男性が立っていた。 「…どちら様ですか?」 「…何か?」 「失礼いたしました。私は、都市伝説から一般人を守る「組織」という機関に所属している黒服…A-No.666と申します。 先ほどの戦いを拝見させていただいた結果、ぜひとも組織に貴女方のお力を貸して頂きたいと思い、お声を掛けさせていただきました。 私達と共に、悪事を働く都市伝説から罪なき人々を守ってはいただけませんか?」 突然の出来事に、しばらく考えていた二人が口を開いた。 「…わかりました。私達の力で、悪い都市伝説から家族やクラスメートを守れるなら…」 「…わかった。せめて、身近な人達は守りたいから」 こうして、天倉姉妹は組織に加入することになる。 組織の闇も知らないまま… 続く…?
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2965.html
はらり、はらり 桜の花びらが、静かに舞い散る 北区にある、古ぼけた教会の裏 大きな桜の木の下にて 「そっか…宏也さん、妹さんがいたんだ」 「あぁ」 佳奈美を背後から抱きしめるように座っている黒服H、広瀬 宏也 …そんな体勢に、佳奈美はやや赤くなっていたりもするのだが まぁ、他に誰も見ていないので、問題あるまい 「まぁ、俺はこの通り、都市伝説に飲み込まれて黒服になっちまった訳で。会ってもわからないだろうけどな」 「……寂しく、ないの?」 ぽつり、そう尋ねてきた 宏也はぽふぽふと佳奈美の頭を撫でながら、苦笑しつつ答える 「まぁ、寂しくないっちゃあ嘘になるがな……いっそ、気付かれない方がいい、って事もあるからな」 自分達兄妹は、都市伝説を憎んでいたから …自分が、都市伝説と化した事を知ったら 妹の心に、どれだけの傷を与えてしまうか …それを考えると、伝える事など、できないのだ 「…そんな事、ないよ」 きゅ、と 自分を抱きしめてきている宏也の手に、そっと手を重ねて 佳奈美は、そう呟くように言う 「だって、家族なんだから……家族と会えないなんて、悲しいから…」 「………佳奈美」 俯く佳奈美の体を、優しく抱きしめる宏也 …佳奈美の優しさが、宏也の壊れた心に、染み渡る 「…ありがとうな。佳奈美」 「ふ、ふぇ!?」 ふわり 額に、口付けを落とされて ぽぽぽ!!と、佳奈美の頬が、赤く染まった 「ひ、宏也さん!?」 「…お前のお陰で、決心ついたわ……色々とゴタゴタ片付いたら、妹に話してみる」 宏也の、言葉に 佳奈美はほっとしたように、笑った 「そっか……妹さん、きっと、わかってくれるよ」 「あぁ……だと、いいな」 その為にも…まずは、成し遂げるべき事を、成し遂げなければ 佳奈美の体を抱きしめたまま、宏也は決意を固めるのだった to be … ? 前ページ次ページ連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者
https://w.atwiki.jp/legends/pages/2336.html
月の下、絶叫が響き渡り、血飛沫が飛ぶ 野生の兄貴が、今夜も狩られる 憎悪と殺意を漲らせ 一人の青年が、兄貴達をメッタ切りにしていた かくして、今宵もまた、十数体の野生の兄貴が、「かごめかごめ」の契約者によって退治されたのだった 「お見事ですね。流石は「組織」の人間です」 そんな青年に、淡々と声をかけてきた女性がいた …この学校町の警察組織において、幹部クラスに身を置いている女性で、名前は広瀬 美緒 どうやら「組織」と繋がりがあるようで、今回の野生の兄貴出没報告をしてきたのは彼女なのだ 正確には、彼女が「組織」のエージェントである黒服Hに連絡し、そこから青年に仕事が回ってきたのだが 「…あれに関しては、本当、ご迷惑かけます」 「全くです。一般人の被害報告がどれだけ出ていると思っているのです」 頭を下げた青年に、容赦なく広瀬はそう告げた 反論できないのが、痛い 「聞いた話によれば、あれが発生した原因は「組織」のとある黒服が原因だとか……「組織」は、一体何をやっているのです。訴えますよ?勝ちますよ?」 「「「あれを制御できる奴なんて、この世に存在しない」」」 きっぱり 青年と、ハクとコンの言葉が見事にシンクロした うん、あの禿をコントロールできる存在なんて、この世に存在してくれていない 悲しいことに 青年達の答えに、広瀬は小さくため息をついた 「…まぁ、いいでしょう。再び、あれの出没証言がでましたら、あなたに伝えます。連絡先を教えてくださるでしょうか?」 「えぇ、構いませんよ」 携帯電話の番号をやり取りする 正直、直接連絡してくれた方が、即座に退治にいけるから、ありがたい 滅びよ、野生の兄貴 ゲイなんぞ滅びよ 軽く、憎悪をたぎらせる青年 そんな様子に気付いているのかいないのか…広瀬は、小さくため息をついた 「…あなたのようなまともな人も、「組織」にいて助かりました。むしろ、あなたのような方と、先に接触したかったです」 「………まぁ、最初に接触したのが、あのHじゃねぇ」 うん、となにやら納得した様子のハク あの男は、色んな意味で問題があるから …特に、女性にとっては 「全くです……よりによって……」 ……ふと 広瀬の表情に……寂しさのような、悲しさのような そんな色が、混じったような そんな錯覚を、青年は覚えた しかし、すぐにその表情は、冷たい物へと変わる 「…それでは、私はこれで」 「あ、はい」 かつかつと、ヒールをならして立ち去る広瀬 その最中、仕事の電話が入ったのだろうか 歩きながら対応している …なかなかに、忙しそうだ 「……うん?どうしかしたのか?」 「あぁ、いえ」 その後ろ姿を、無意識にじっと見つめてしまって コンに話し掛けられて正気に戻った青年は、軽く首を振った 気のせいだろうか あの広瀬という女性は、都市伝説のことを口にしている時 ハクやコンと話している時…憎悪を、押し隠しているような気配がした 都市伝説を、憎いんでいるのだろうか 憎んでいて、そうだと言うのに いや、それだからこそ、「組織」と繋がりを持って、都市伝説の存在を隠そうとしているのか …ただ、それだけでは、なくて 「…気のせい、ですかね」 気のせいならいいのだが あの広瀬という女性が、何か、都市伝説に付いて…もしくは「組織」に関する何かに関して 何か、因縁を持っているような そんな錯覚を、青年は覚えたのだった to be … ? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1524.html
【橙・レイモンの起承転結2】 ~一コマ目~ 上田「新感覚TCG、フォークロア・ザ・ギャザリング発売決定!」 メル「善、悪、中庸、狂気、理性など様々な属性の都市伝説を使いこなして勝利を目指そう!」 ~二コマ目~ 上田「契約者のカードは都市伝説の力を増幅させるぞ、これで一気に逆転だ!」 メル「まあ契約できるかは相性次第ですけどね。」 ~三コマ目~ 上田「………という夢を見た」 メル「………………………………どれだけ暇しているのですか?」 上田「ああ、……ごめんね。暇で。」 ~四コマ目~ 橙「ハーメルンの笛吹きっぃぃいい!貴様あいつに何をした!!」 ガンガンガンガンガン! ドアを叩く橙。 メル「知りませんってぇぇえ!まさか自室に引きこもられるとは!思わなかったんだもん!!!」 上田「うふふ、どうせ暇だしカードゲームでも作るんだ……。」
https://w.atwiki.jp/legends/pages/1323.html
かふっ!? それを口にして、思わず吹きかけた …思えば、何か周りのジュースの類と何か違うよなー、と思った時点でコップに注ぐべきではなかったのだ なんて言うか、しょっぱい あえて言うならば、海で溺れた時の感覚と言うか何というか、そんな味 OK、理解した これ、海水だな? 「あ…!だ、大丈夫ですか!?」 慌てて、こちらに駆け寄ってくる小柄な少年 多分、俺より年下だろう…中学生くらいだろうか こいつの持ち物か 「あぁ、平気だ」 ほら、とペットボトルを返してやる ほっとしたような表情を浮かべている少年 しかし、海水を持ち歩く、なぁ… 多分、ここに来ている以上は、都市伝説契約者なのだろう どんな都市伝説と契約しているのだろうか、と他人事ながら少々気になったのだった 前ページ次ページ連載 - 花子さんと契約した男の話